若手企画シンポジウム

9月2日(金)(大会1日目)9:30-12:00

シンポジウムタイトル:「環境適応メカニズムの解明と工学的応用」

オーガナイザー:寺尾勘太(北海道大学・学振特別研究員),志垣俊介(東京工業大学・学振特別研究員),大橋ひろ乃(首都大学東京・学振特別研究員)

・企画趣旨:
生物は周囲の環境に応じて適応的に形態・行動を変化させる。この適応メカニズムは近年,遺伝学技術を用いることでその詳細が解明されてきた。本シンポジウムでは,生殖や採餌の経験に基づく行動変化メカニズムの解明と,環境適応能をロボット工学に応用する試みについて紹介する。

1.松本 英之(ハーバード大学)

Dr. Matsumoto
演題:
中脳ドーパミンニューロンは報酬コンテクストに応じて「価値」の予測誤差信号を伝える

要旨:
報酬と罰からの学習は、環境に適応した行動形成に重要な役割を果たす。 古くから、脳のドーパミンシステムがこれらの学習に関与すると考えられてきたが、現在、その前提が正しいのか、大きな議論となっている。 本研究では、オプトジェネティクス技術を利用し、ドーパミンニューロンは報酬と罰の情報を統合すること、報酬が得られる頻度に応じて罰情報のコーディングが変化することを明らかにした。 この結果は、ドーパミンニューロンが周囲の環境に適応してシグナルモードを変化させる可能性を示唆すると考えられる。

2.宇賀神 篤(玉川大学・学振特別研究員)

Dr. Ugajin
演題:
ミツバチにおける初期応答遺伝子の解析−保存性, 特異性の高い2つの遺伝子について−

要旨:
ミツバチは昆虫の中でも高い学習・記憶能力を持つが、その詳細な分子機構は不明である。 脊椎動物では、神経活動に伴い発現が誘導される多数の「初期応答遺伝子(IEG)」が学習・記憶の過程で重要な役割を果たすとされる。 一方、ミツバチを含めた昆虫では、IEGの報告は3遺伝子のみに留まる。 本講演では、脊椎動物・昆虫間で保存されたIEGであるEgrに加え、RNA-seqにより最近見出したSer/Thrkinase型の風変わりなIEGについてもご紹介したい。

3.横井 佐織(基礎生物学研究所・学振特別研究員)

Dr. Yokoi
演題:
メダカの配偶者防衛行動を制御するバソトシンシステム

要旨:
配偶者防衛は、オスがメスに追従し、他のオスとの交配を阻止する行動と定義され、昆虫から霊長類まで様々な動物種で観察が報告されている。 しかしながら、この三者関係を研究室内で定量する系はこれまで確立されておらず、分子機構はほとんどわかっていなかった。 今回、モデル動物であるメダカを用いて行動定量系を確立し、TILLING法、TALEN法を用いて変異体を作成、その行動解析を行ったことにより、バソトシン(バソプレシンの非哺乳類ホモログ)が当該行動に関与することが遺伝学的に明らかになった。

4.清水 正宏(大阪大学)

Dr. Shimizu
演題:
メカノバイオロジーに基づく生体機械融合型ロボット

要旨:
近年,細胞への機械刺激が形態と機能分化に大きな影響を与えることが明らかになってきた. 本講演では,メカノバイオロジーを応用した生体・機械融合ロボットに関する研究を紹介する. 筋細胞は,ロボットのアクチュエータであると同時に,機械刺激センサの役割を果たす. ロボットは,機械刺激を通して筋細胞の空間配置や収縮能を自己改変する.これは,細胞の機械刺激応答による適応能を直接ロボットに埋め込む新奇なロボティクスである.

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